って来る。
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ヴィンダー(立ち止り、無作法に大伸びをし)ああ、偉い目に会った。筋も何もすっかりつまりおった。神々の饗宴と云う奴には、ほとほと参るぞ。
ミーダ 全くだ。困るのは君ばかりじゃあない。見てくれ、折角荒々しいような執念いような、気味悪い俺の相好も、半時彼方で香の煙をかいで来ると、すっかりふやけて間のびがして仕舞った。(手でごしごし顔を撫で廻す)どうだ、少しは俺らしくなったか?
ヴィンダー(其方は見ず)上帝の奴、手に負えない狡猾者だ。俺達やカラは、地体ああ云ういやに晴れ晴れした席にいたたまれないのを百も承知でいながら、何食わぬ顔で叮嚀に請待しおる。なまじい、諸神なみに扱われるので、ふてて思う存分あたけることも出来はせぬ。
ミーダ 未だ音楽が聴えるな。――アポローばりの立琴をきかせられたり、優らしい若い女神が、花束飾りをかざして舞うのを見せられたりすると、俺の熾な意気も変に沮喪する。今も、あの宮の階段を降りかけていると丸々肥って星のような眼をした天童が俺を見つけて、「もうかえゆの? 又、いらっちゃい」と、頭を振っ
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