下さい。(去る。)
ミーダ ――虫の好いことを云う。――どれ。(ごろりとなってヴィンダーブラを見る。)何だ。もう寝たのか、単純だな。(そう云いながら、自分も突伏し、ヴィンダーブラと交り交り鼾の音を高く立てる。)
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処へ、智慧、愛、想像の女神イオイナ光のように現われる。
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イオイナ 実は、心配して様子をそっと見に来たのです。(二神の様子を見)まあ、さも自分の仕事は成就したと云いたそうに眠入っていること。先刻の有様では、如何なることかと案じたが、この神々に、満足の感情と、倦怠と、眠りのあるのは有難いことです。暴れる時は、天地の軸が歪みそうで、天帝の眉さえ顰《ひそ》む程だが、必ずあとに、休止と云うものが従っている。
  私は始めもなければ終りもない。夜も昼も区別をしない働き手です。余り身軽で、静かで、伴う物音がないから、時々行方をくらましたとさえ思われるが、明るい澄んだ心の光ですかして見ると、つい傍にいたのがわかります。
  やっと、今鎮まったあの天と地との大騒動の間でも、私は私の任務を尽していました
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