、当分何も手につかない戦々兢々、なかなか効果は偉大な、絶望、その従弟のもっと可愛い自暴自棄を置土産にする。
カラ それなら私は――執念深い思い出。忘れようとして忘られず、思い起して死んだ者、先《さきだ》った物の為に流す涙、溜息は、男のでもかなり好もしいものです。
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(皆去る)

濛々とした雲は鎮り、微にやけた鉄のような色を反映させながら、依然として雲の柱第二級天の宮を支えている。
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ヴィンダー(横わって)少し運動したので爽快だ。このいい心持で一寝いりするかな。
カラ 私も何だか若返ったような気持です。行って、昼月の鏡で、髪の縺れ工合でもなおそうかしら。
ミーダ 思いがけない機会で、隠密な日頃からの俺の唆かしの結果が見られて嬉しかった。人間共も、まだ当分は材料になるな。
ヴィンダー 偶然を徒らな偶然で終らせないのが俺達の腕だ。大方今頃は、途方にくれた鈍い面を、深刻らしく歪めて、焼後の灰でもほじくっているだろう。あーあ(欠伸)
カラ では暫く左様なら。又よい知らせがあったら仲間に入れるのを忘れないで
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