夢中」を撒くと、同類の胸も平気で刺すから愉快なものだ。
ヴィンダー さてもう一息だ。俺の力の偉大さは、小さなものには著わされぬ。あの壮麗らしく人工の結晶を積みあげた街をつぶして呉れよう。斯う三叉でくじって、先ず屋体に罅《ひび》を入らせる。一ふき※[#「韋+備のつくり」、第3水準1−93−84]《ふいご》で火をかける。――どうだ。美事な、自然らしい悪意には、我ながら感服の外はない。
ミーダ 愉しめ! 愉しめ! 押しこめに会っていた本能の野獣ども。今日は火の中のワルプルギスだ。如何に醜悪な罪証も寛大な焔が押し包んで焼き消して呉れる。(とまあ唆かすのだ。)心に遺る罪証の陰気な溜息を恐れない為には、雄々しい仲間をどんと殖して並ばせる。――だが、地の神が衣の裾を一ゆすりする偶然から、俺のこぼした種一粒が、斯那塩梅に芽をふき出そうとは思わなかった。
カラ ああ、あの火花の下をかいくぐり、嬰児の命を庇おうとして、到頭ばったり倒れた母親。――破壊神、呪いの神にお礼を云って戴きます。アーリアン人の喧嘩の時も、餌物は随分ありはしたが、どれもこれも味のない程苦しかった。敵が憎いと云う一念で、胆汁が霊にまで滲
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