とられている。そこには白い朝鮮服をつけて、うれしそうに代議員席にあって拍手している南北朝鮮からの代表チュ・エンたちの姿がある。しっかりとして、たくさんの苦労をしのいで来ていることが報告をよんでいる五十がらみのその顔つきににじみ出ている中国代表のツァイ・チャンや、作品でなじみのあるフランスのユージニ・コトンや副議長であるソヴェトのニナ・ポポヴァの立派さに加えて、これらのアジアからの婦人代表たちが、堂々と帝国主義の侵略とファシズムに反対して、民族の独立と平和を主張している姿は、わたしたちの目に涙さえ浮ばせる。朝鮮服を着て、朝鮮の姓名をなのって、朝鮮の言葉で話すことさえ、日本の植民地政策で禁じられていた朝鮮の女性たちが、きょう世界に向って自分たちの民族の幸福のために発言するよろこびはどんなに深いだろう。中国代表は、いよいよ中国人民が植民地人としてのくびきをその肩からなげすてるその前夜に、ここで語っているのだった。
 日本からの代表の影はブダペストのこの大会に見えなかった。今年の夏のパリの平和会議にも見えなかったし、プラーグの第二会場にも現れなかった。だけれども、それなら日本には、戦争に反対し
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