帽がまるで少ない。みんな順ぐりだ。人気ないプラットフォームの上に立って車掌がおろした荷物の番をしている。足の先に覚えがなくなった。
 ――寒いですね。
 猟銃を肩にかけて皮帽子をかぶった男が、やっぱり荷物の山の前に立って、足ぶみしながら云った。
 ――ここは風がきついから寒いんです。
 やっと赤帽をつかまえ、少しずつ運んで貨物置場みたいなところへ行った。
 ――どこへ行くんですか?
 ――日本の汽船へのるんだけれども、波止場は? あなた運んでは呉れないのか?
 麻の大前垂をかけ、ニッケルの番号札を胸に下げて爺の赤帽は、ぼんやりした口調で、
 ――波止場へは別だよ。
と答えた。
 ――遠い? ここから。
 ――相当……
 馬車を見つけなければならないのだそうだ。
 ――ここに待ってて! いい?
 Y、赤帽つれてどっかへ去った。十分もして赤帽だけが戻って来た。最後の荷物を運ぶのについてったら、駅の正面に驢馬みたいな満州馬にひかせた支那人の荷馬車が止ってて、我々の荷物はその上につまれている。
 支那人の馬車ひきは珍しく、三年前通ったハルビンの景色を思い出させた。三年の間に支那も変った。支那は
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