ていたのだろう。
ところが、貨車はどんどんやって来、もうその下をもぐって往来しかねるようになったので、この新しい木橋がつくられた。――
新らしい陸橋はここで見たのがはじめてではなかった。どっか手前でもう二つばかり見た。
十一月五日。
あたりはまだ暗い。洗面所の電燈の下で顔を洗ってたら戸をガタガタやって、
――もう二十分でウラジヴォストクです!
車掌がふれて歩いた。
Y、寝すごすといけないというので、昨夜はほとんど着たまま横になった。上の寝台から下りて来ながら、
――いやに寒いな!
いかにも寒そうな声で云った。
――まだ早いからよ、寝もたりないしね。
いくらか亢奮もしているのだ。車室には電燈がつけてある。外をのぞいたら、日の出まえの暗さだ、星が見えた。遠くで街の灯がかがやいている。
永い間徐行し、シグナルの赤や緑の色が見える構内で一度とまり、そろそろ列車はウラジヴォストクのプラットフォームへ入った。空の荷物運搬車が凍ったコンクリートの上にある。二人か三人の駅員が、眠げにカンテラをふって歩いて来た。
――誰も出てない?
――出てない。
荷物を出す番になって赤
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