りに髪を結わせて一番似合う紺の縞のお召をきせて車にのせて母は出してやった。

        (四)[#「(四)」は縦中横]

 三十分も車にゆられて向うへついた時上り口には男下駄がいっぱいならんで居た。広間の方からはかっちまりのない男特有の笑声がくずれる様に起って来る中に、叔母のビードロ玉の様にすき通る声がきわだってきこえた。茶の間から足音をきいて出てきたばあやは「マアようこそ」と云って顔を見た眼で一文字にうら袖の色までねめまわして、「皆さまお待ちかねでございますよ早くあちらへ、サア」と云う時には敷石にそろえた草履の縫模様を見て居た。千世子がまだ手袋をぬいで居るのにせきたてて広間につれて行った。障子を細くあけて叔母に何か云ってだまって千世子の背中を押してやりながら後からしめてソソクサとかわききった足音をたてて出て行った。うす紫の様な煙草のけむの中にいくつもいくつも瞳がこっちを見て居たけれ共、別に赤くなるほどのはずかしさも、うつむくほどの余裕のない態度もしなかった。
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「めいでございます、林町の、どうぞよろしく」
[#ここで字下げ終わり]
 チラッと千世子の方を見
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