じゃありませんか、お正月の着物の心配も御自分様がなさらなけりゃあして呉れる人がないんだもの」
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眼尻にしわをよせながら聞いて居た千世子は原稿紙の上にまっかなペン軸をころがしながら云った。
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「ほんとうに御気の毒、今年はうちの阿母さんに見てもらえばいいじゃありませんか、それに又わざわざ男だもの作らずともすむでしょう?」
「だって仕立上ったばっかりの着物のしつけをとるのもいかにも新らしい気持がするこってすもの――私みたいな男でもかなり細っかい感情をもってましょう?」
「わりにね、でも興津に帰れば阿母さんがいらっしゃるんだもの……」
「これが一かたついたら一寸行ってきましょう、樗牛のお墓に行ってきますよキット、葉書あげましょうネ!」
「なぜ葉書っておかぎりになったんだか下らない事に気がねしていらっしゃる。どうせ私になんか御かまいなしで阿母さんがあけて見るんだから手紙だって葉書だって同じじゃありませんか」
「ほんとうにねエ、よその母親より厳格で神経質ですネ」
「エエ、エエ、そりゃあもうまるで定規とコンパスで一辺の長さって云った様な感情をもって居る
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