近いうちにきっと御目つけになれましょう、そうに違いありませんワ、自分のすべき事を真面目にして行く時に一人手に自分を待って居るものが見つかりますもの。
これから私達は救け合ってお互に幸福にだれにも似せる事の出来ない生活をして行かなくっちゃあねえ」
[#ここで字下げ終わり]
千世子はいつもとは人の変った様な調子でこんな事を云った。自分の頭の上が光って居る様に感じながら千世子はジーッとHのかおを見た。
[#ここから1字下げ]
「アア――神様……」
[#ここで字下げ終わり]
Hは目をつぶってうつむいていつまでも頭をあげなかった。
[#ここから1字下げ]
「貴方が私を忘れさえしないで下さればほんとうにその方が幸福かも知れません、私達は仲よくそうして考え深く――」
[#ここで字下げ終わり]
しばらく立って顔をあげたHはその白い千世子のすきな額と濃い髪を尊い様に見せながら口の辺に笑いをうかべながら云った。
二人は新らしい生命をうけた様にその日っきり今までお互に迷って居た事は忘れる事にした。
千世子はしんから迷わなくなった。
あけてもくれても真面目に輝いた目をしながら書いたりよんだりして
前へ
次へ
全192ページ中189ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング