るとすぐ浜に出てひやい水に足をつけた。眠りからさめた許りのムシムシした足はやわらかくくすぐられる様に感じて居た。
そうして居る間に気持もはっきりと迷わない心でものを見る事が出来る様に思えた。
まだ何にもさわらない白いふっくりした手の掌にひかって居る水をすくって一寸唇につけて合わせて居た指をかるくゆるめると、糸の様に水は細く五つ色にまたたきながら落ちて行った。
こうして一日を始めた千世子の日はその日中嬉しい事ばっかりであった。
その翌日も翌日も海を見、海に話して日を送った。そうして顔の色も日の立つごとによく貧亡に[#「亡に」に「(ママ)」の注記]なった頭も目に見えない少しずつとまされて行った。
囲りの旅客を観察するとか批評するとか云う余裕のないほど千世子は海にきをとられて居た。
おきるとからねるまで浜に座って暮して居るのが何よりうれしいほど千世子の心は子供げなものになって居た。読むつもりでもって来た本等は床の間のケースの上につまれたまんま時々に吹く海風に軽い表紙の本なんかはハタハタとひるがえったりして居るばっかりだったし、又原稿紙も一字もうずめられて居なかったのを母親なんかは
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