こから1字下げ]
「有難う、もうよくなりました」
[#ここで字下げ終わり]
低い声でHが云った。千世子は何でもに合点が行ったと云う風に首をふって、
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「こうして居る方が幸福だ!」
[#ここで字下げ終わり]
千世子は斯う心の中で云って居た。
台所の器具のぶつかる音や母親の女中に何か云いつけて居るこえを遠くの方にききながら二人はひっぱりあげる事の出来ない様な、深い深い冥想にしずんで居た。
千世子は自分の頭に血がドックドックとのぼって行くのが分るほど考える事がこみ入って来た、目をつぶって手を組んでひざをかかえて身動きもしないで居た。
Hは細い目をあけてととのった調子で考え込んで居る千世子の白いくびにフックリもり上って居る胸に気を引かれた、Hのまだ若い血のみなぎって居る身の中からは一種異様の誘惑が起って来た。
Hは椅子から立ち上ってカーペッツに足をうずめる様に歩き廻った。
千世子はしずかに目をあけると一緒に顔がまっかになった、何の意味だか千世子自身にも分らなかった。千世子は衿をかきあわせると一緒に立ち上って少し足元をふらつかせる様にして一番そばの戸から自分の
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