」
「知ってますわ、その位の事、母さんは又お嫁のしたくにこんな事教えるなんて云っていらっしゃる」
[#ここで字下げ終わり]
キイキイ千世子は笑いながら茶の間にかけもどった、Hは西洋間に行ったと見えてそこには見えなかった。
小声にうたをうたいながら廊下をすべって西洋間に行った、長椅子の上にHはつっぷして居た。
[#ここから1字下げ]
「どうなすったの? 頭がいたい?」
[#ここで字下げ終わり]
Hの頭の弱いのを知って居る千世子はやさしく云った。
[#ここから1字下げ]
「いいえそんなじゃあない――ちょっとばかり」
[#ここで字下げ終わり]
Hは泣いたあとの様なこえで云った。千世子はHの思って居た事が大抵はわかったけれ共それをさける様に、
[#ここから1字下げ]
「いけない事――少し葡萄酒をあげましょう、そして頭を押してあげましょうねえ」
[#ここで字下げ終わり]
戸だなから千世子は小形のグラッスに白いブドウ酒をもって来た。
Hはそれを娘がする様におちょぼ口をしてのんだ。酒に弱いHの目のふちや頬はポーッと赤らんで来た。千世子はHの頭を両手にはさんで一寸の間押してやった。
[#こ
前へ
次へ
全192ページ中114ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング