見て恐ろしい事は必[#「必」に「(ママ)」の注記]してないといってもいい位でしょうからねえ。
 でもねお互に人間なんだからあんまり批評的に見ると必[#「必」に「(ママ)」の注記]していい気持のする事ばっかりはありませんからねえ。
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 いつもになく静かな気持で千世子はこんな事を話した。そう云う事――今肇がなやんで居る事等は千世子のもうとっくに解決のついて居る今から思って見れば何でもない事であったのだ。
 千世子の家はおだやかに暖くて四辺の人がすべて千世子のためばかりに心を用いて居て呉れた。
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「それだのにどうしてだったろう」
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 今思う事はある。
 けれ共また同時にそれが必[#「必」に「(ママ)」の注記]して無駄な経験ではなかったと云う事も思う。
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「ねえ一度両親の心やなんかが分らないで下らなく思いまどって見たりなんかした末に考えて居る事もわかり自分に対しての感情もはっきり知った時両親になついて行く時の勢と云うものは大したものなんですよ、
 モスケストロームの大渦巻よりもっとひどい勢でねえ。
 理
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