頭もそう気になるほどでもなくってねえ。
 今日は午後っからずーっと起きてるんです、
 いいお天気でしたからねえほんとうに――
「ようござんしたねえ、
 早く御なおりなすって。
 篤さんも随分心配してましたよ、
 あの人は去年貴方が悪くていらした時もしってるってそう云ってました。
 あの書斎のひろい椅子に腰かけて青い顔をして居るのを見るのはほんとうに変なほど気味が悪いって。
 やっぱり眼の上が落ちました、
 そいで眼が大きく見える。
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 千世子はさっきの京子の言葉を思い出して笑いながら小さい鏡を立って持って来た。
 その小さい中にうつる自分の顔を見ながら、
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「まあ、ほんとですねえ。
 少し気違いじみた色をして、
 随分青いんですねえ私の顔は、
 それにふだんだってそんなに赤ら顔じゃあありませんからよけいなんですよ。
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 肇はだまって千世子の顔を見つめた居た。
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「ああ貴方も見つめる癖を持ってらっしゃる、
 私もそう云うくせが有るんですよ。
「そうですか、
 自分じゃあ気がつきませんがねえ。
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