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急ににぎやかに入口に出ると肇は帽子をかぶりながら、
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「お邪魔しました。
また今度上るかもしれません。
「どうぞ、
私のお天気屋と我ままと『かんしゃく』さえ御承知なら。
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かるく頭をさげて千世子は笑った。
そしてまだ後姿の見えるうちに部屋へひっこんでしまった。
――○――
辺□[#「□」に「(一字分空白)」の注記]な暗いばっかりで何のしなもない夜道を二人はぴったりならんで歩いた。そして若い女達がよくする様にお互に手をにぎりっこして水溜り等に来かかると、水溜の上に二人の手でアーチを作ってとび越えたりした。小石をけとばしながら篤は肇の顔をのぞき込む様にしてきいた。
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「どうだったえ?
「何が?
「何がってさー、今日の訪問がさ、――どうだったかってきくんじゃあないか。
「そうだねえ、どうって別に――
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肇は煮えきらない返事をした。
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「あの女《ひと》はどう思ったえ――
一寸見た時どんなだと思ったね。
「そうさねえ、
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