私とはまるで反対に理智的な澄んだ頭を持って生れたんですけどねえ。
「貴方!」
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肇は始めて千世子を呼びかけた、そしてしずかなはにかみはにかみ子供の話する様にぽつんぽつんと、
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「私はそれじゃあ例外ですよ。
両親も可哀がって呉れたし、貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]ながらそんなにあくせくしないで居られる家庭に育ったんですけど、こんなかげの多い人間が出来上ったんです。
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と云ってかすかに笑った。
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「そいじゃあ、貴方が自分でそうしたんじゃあありませんか。
体が弱くてらっしゃったんでしょう。」
「ええ、学齢頃までは医者にかかりづめでしたよ。
「だからですよ。
きっとそうですよ、
子供のうち弱かった子はそのまんま育っても、あんまり快活にはならない様ですもんねえ。
でもまあよく今までに御なりんなったんですねえ。
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千世子は年下のものに云う様な口調で云って笑った。三人はそんなに打ちとけた話も何故かしなかった。
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「ねえ笹原さん、
私達が今日は
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