た。
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え?
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肇はふっと思いあたった様にうす赤い顔をした、そして下を向いてくすぐったい様な顔をした。
その小供っぽい様子を見て千世子はおっかぶさる様に思い上った気持で笑った。
それからは多く肇の方を見て、千世子は話した。
絵の話も音楽の話もした。
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貴方日本の楽器の中で何が一番気に入っていらっしゃるんです?
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肇は一寸考える様子をして、
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「そうですね、
はっきりはわかりませんけど、琴は自分で弾きます。
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こんな事を云って篤と顔を見合わせて微笑んだ。
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「御自分で?
御師匠さん処へ行らっしゃるんですか?
「いいえ姉から習うんです。
いつでも千鳥の曲はいいと思ってます。
「随分精しいんですねえ。
私琴は弾けないんですよ、
ただ三味線はすきですきくだけですけど、
尺八のいい悪いなんかはわかるほど年を取って居ませんしねえ。
「いつでもね肇君の姉さんがそう云ってるんですよ。
お前なんかどうせろくなものには
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