くってあつい様な輝のある目と赤い小さい唇と、やせて背の高い体をして居た。
話をきいては微笑んだりしかめたりして居る様子は何となし気障な様でありながら不愉快な感じは与えなかった。茶色っぽい絣の袷に黒い衿を重ねて小倉の袴の上から同じ羽織をかっつけた様にはおって居た。
千世子は笑いながら云った。
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「貴方は無口な方でいらっしゃるんですねえ。
「ええ、兄弟もなし祖母のそばでばかり一人で居ましたから一人手に斯うなったんです。
でもしゃべる事だってないじゃあありません。
「ほんとうに無口同志の寄合なんですよ。
私達はせわしい中を大さわぎして会っても野原なんかに出かけて行ってよっかかりっこをしながら空を見て居て二言三言話したっきりで別れちゃう事だってあるんです。
でも妙なもんでそれでも満足するんです、
お互に。
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篤はこんな事を云いながら肇の袴の紐をひっぱって居た。
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ほんとうの仲よしになれればだれだってそうでしょうよ。
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親友を持たない千世子は二人の兄弟の様な様子を面白そうに見て居た。
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