しょう。
[#ここで字下げ終わり]
 外にたったまんま篤は云って扉を細目にあけた。
 京子の方を見てポックリ頭を下げて千世子の方に目を向けてたしかめる様にも一度、
[#ここから1字下げ]
「ねいいでしょう。
[#ここで字下げ終わり]
と云った。
 千世子はだまってがっくんをした。
 京子は間のわるそうないかにも世なれない様子をして、
[#ここから1字下げ]
 なぜ別な部屋にしないの、
 会った事もない人ん中に私は居るのがいやだもの。
[#ここで字下げ終わり]
 鼻声でこんな事を云った。
 千世子が何にも返事をしないで居るうちに入口に二つの黒い顔が重って見えた。
[#ここから1字下げ]
 お入んなさいよ。
[#ここで字下げ終わり]
 わだかまりのない声で千世子は云った。
[#ここから1字下げ]
 君! お入りよ。
[#ここで字下げ終わり]
 篤はも一人の肩を押て扉を開けたまま千世子のわきに行った。
[#ここから1字下げ]
 いらっしゃいまし。
[#ここで字下げ終わり]
 千世子は新らしい客を見て云って篤の方に目を向けて、
[#ここから1字下げ]
 どなた?
 何ておっしゃる方?
[#ここ
前へ 次へ
全67ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング