下げ終わり]
千世子は京子を引っぱる様にして書斎に通した。
ほんとうにがんなりした様な顔をして口をきくんでも京子はのろのろとした。
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何か一つ事をするとほんとうにうんざりしますねえ、
昨日と今日は只もう空ばっかり見てるんですよ。
皿にゃあといた絵具がこびりついたまんまだし、筆はこちこちになったまんまで――
このまんま当分遊ぶときめた。
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千世子によっかかりながら云う。
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何故、そんなに甘ったれるんだろう、
大きななりをしてながら、
私より貴方は随分かさばって居るもの。
でも今日はいつもよりよっぽど奇麗に見えてますよ、気持がいい着物の色が――
それにね、
貴方みたいな人は黒っぽいものが一番似合う。
横縞は着るもんじゃあないんですよ、
大抵の時は横っぴろがりに見えるから。
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母親の様にしげしげと京子のなりを見た。
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貴方新ダイヤのついたものなんかするもんじゃあない。
私は大っきらい、
何だか変に山師じみてさ。
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