下げ終わり]
 千世子は京子を引っぱる様にして書斎に通した。
 ほんとうにがんなりした様な顔をして口をきくんでも京子はのろのろとした。
[#ここから1字下げ]
 何か一つ事をするとほんとうにうんざりしますねえ、
 昨日と今日は只もう空ばっかり見てるんですよ。
 皿にゃあといた絵具がこびりついたまんまだし、筆はこちこちになったまんまで――
 このまんま当分遊ぶときめた。
[#ここで字下げ終わり]
 千世子によっかかりながら云う。
[#ここから1字下げ]
 何故、そんなに甘ったれるんだろう、
 大きななりをしてながら、
 私より貴方は随分かさばって居るもの。
 でも今日はいつもよりよっぽど奇麗に見えてますよ、気持がいい着物の色が――
 それにね、
 貴方みたいな人は黒っぽいものが一番似合う。
 横縞は着るもんじゃあないんですよ、
 大抵の時は横っぴろがりに見えるから。
[#ここで字下げ終わり]
 母親の様にしげしげと京子のなりを見た。
[#ここから1字下げ]
 貴方新ダイヤのついたものなんかするもんじゃあない。
 私は大っきらい、
 何だか変に山師じみてさ。
[#ここで字下げ終わり]
 こ
前へ 次へ
全67ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング