来て呉れたから。」
「貴方はお天気屋だもの、
そいで又我ままなんだもの、
あの女だって思いがけない処に気をつかって居るんですよきっと。
昨日《きのう》の朝よった時に私の顔を見るなり、
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「まあ、貴方様、いい処へお出下さいました事、御起ししなければならないんでございますけど少し工合が悪いと、
『私は朝が一番お前のきらいな時なんだよ』
なんておっしゃいますんですから。
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って云ってたもの、可哀そうに――
「それもそうね、
さきおとといの朝六時にお起しって云って置いたんできっちり六時が鳴ると私の処へ来て肩をゆすりながら、
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貴方様、お置き遊ばせ。
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て云うのがさっきから目を覚して居る私にははっきりわかったけれ共、狸をして居たら、鏡の前に行ってしきりに何かして居たっけが音のしない様に私が起上って居たのを見てまああの様子ったら、ぶきりょうの女があわてた様子ったらありゃあしない。
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こんならちもない事を云いながら千世子は男の様に不遠慮に笑った。
笑うために大きく開く口から「
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