京さんを呼んで来てお呉れな。
どうでも来ていただかなければならないんですからってね。
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と口上を教えて女中を一番近所に住んで居る京子の所へ迎にやった。
十五分|許《ばかり》してから京子が書斎に入って来た時千世子は待ちくたびれた様にぼんやりした顔をしてつるした額の絵の女を見て居た。
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今日は大変御機嫌が悪いんだってねえ、
どうしたの。
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笑いながら京子は千世子の顔を見るとすぐ云った。
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御機嫌が悪い?
歌を唱わなけりゃあ御機嫌が悪いんだと一人ぎめして居るんだものいやになっちゃう。
それに又彼の女にはその位の観察が関の山なんだものねえ。
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女中が少しすかして行った戸をいまいましそうに見ながら千世子は云った。そしてだまったまんま京子の桃割のぷくーんとした髷を見て居た千世子は急に嬉しそうに高く笑いながら京子の肩をつかんで言った。
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「いいえね、
ほんとうを云えばほんのちょっぴり御機嫌が悪かったの。
でもね今はすっかりなおった、
貴方が
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