たりとして澄んだ気持になった。
力強い自信と希望は今更の様に千世子の心の中いっぱいに満ち満ちて世の中のすべてのものが自分一人のために作られたと思う感情に疑をはさんだり非難したりなんかする事は出来なかった。
緑の色が黒く見えて尊げな星の群が輝き出した時しなければならない事をすました後の様な気持で室に戻った千世子は習慣的に机の前にさも大した事がありそうにぴったりと座った。
ゴンドラの形をした紙切りをはさんだ読みかけの本の頁をやたらにバラバラとめくったりして眠るまでの時間の費し方を考える様な様子なんかした。
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誰か来ればいいのに――
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門の外を通る足音に注意したりわざわざ女中を呼んで、
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誰か来るっていいやしなかったかえ。
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ときいたりなんかしたほど千世子には友達の来るのが待たれた。
かなり夜になっても誰《だ》あれも意志[#「志」に「(ママ)」の注記]の悪い様に訪ねて来なかった。
我まんが仕切れなくなって、
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お前ほんとうに、お気の毒だけどねえ、
一寸行ってお
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