でつとめても出来ませんよ、
 極端に走る人がつとめていいかげんにする事は出来てもねえ、
 私の様な人間はこれっきりなんですよ。
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 篤は静かな声で云った。
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「そう云う運命に生れたんですねどうしても。
「運命に?
 私は運命に使配される事はしたくありませんねえ、運命なんてものは自分で開く事が出来ますもの。
 私一人かもしれないけどそう思ってます、
 又きっとそうであるらしゅうござんすよ。
 運命なんてものはどんなたくらみがしてあるかしれたもんですか。
 運命の司が『なぐさみ』の多い様に気の小さい人間共にあやうい芸当をさせてよろこぶんですよ。
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 意志[#「志」に「(ママ)」の注記]っぱりでも、と云った調子に千世子は強くこんな事を云った。
 そしてもうほんとうにしんからつかれた様に椅子に頭をもたせて眼をつぶって居た。
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 疲れたんでしょう?
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 篤は笑いながらきいた。
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 ええ、
 あんまりしゃべり様が多かったんでね。
 いつも斯うなんですから。
[#
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