ね、
心に浮む事をお祈りの文句を誦す様にとなえるんですよ、
手を胸に組んでね、
ひざまずいて美くしい太陽の光の中でね、
私の心の満足するまで云うんです。
私の心が満足した時にはたった一|滴《しずく》の涙がポロッとこぼれるとそれで私はすっかり満足するんです。
嬉しいんですよ、
貴方になんかどうしたってわかりません、
私の領分なんですからね。
[#ここで字下げ終わり]
千世子はこんな事を云った後であんまり長く話して疲《くたび》れた様に深い溜息を吐《つ》いた。
今までとはまるで違った沈んだ目をして千世子は篤の顔を見て云った。
[#ここから1字下げ]
「貴方って云う方はほんとうに静かな方なんですねえ、
山の奥にある沼の水の様にねえ。
でもあの水位注味[#「注味」に「(ママ)」の注記]深いんならよござんすよ。
「ほんとですねえ、
自分でもよくそう思います。
でも性質だから仕方がありません。
だから『奇麗だ!』と思ったっていいかげんまで行けば立ち消えがして仕舞うし何かに刺撃されてもいいかげんまでほか行きませんからねえ。
すべてが小さくかたまって仕舞うんです。
自分
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