ほんとうにそう云います、
表われて居ないものの中にひそむ美くしさが一番美くしいものだってねえ。
それで又人間の手で出来ないものの中にそのびっくりする様な美くしさが多くある。
私は自然の美くしさの讚美者なんです。
ギリシア神話は今我々の実際に見られないもんです、見ようと思うには必ず何か芸術的な何物かを通してでなければ出来なくて丁度――
ええ太陽の微笑を浴びなければ見られない銀器のあの美くしさの様なもんだからこそ今でも我々の頭の上にかがやいて居るんです。
ねえ、美くしさに大小はありませんねえ、
私は美くしさの中に生きてその中に葬られるんだと思ってます、
又それを望んでますもの。
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千世子は興奮した眼つきをして云った。
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私はね、
こんな事を云って居る時はいつでも何か大きなものの「ふところ」の中に居る様な気がして居るんですよ。
そして力強い希望と喜びが、美くしさ、と云うものの中から私の処へ来るんです。
美くしさを間違なく感じ得られる事をほんとうに私はどれだけ感謝して居るんだか。
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篤は驚かされて
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