づけた。
(二)[#「(二)」は縦中横]
神田まで用で行って帰って見ると思いがけなく篤が来て千世子の帰るのを待って居た。
紙包と傘を持って元気らしく笑って立って居る女中は、
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さきほどお出遊ばしたんでございます。
三時頃までに帰るとおっしゃってでございましたと申上たんでお待ちになっていらっしゃったんでございますよ。
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と云いながら書架のわきに本を見て居た篤に、
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只今お帰りになりました。
[#ここで字下げ終わり]
と云って奥へそわそわと引っ込んで行った。
千世子は銘仙の着物に八二重の帯を低くしめたまんま書斎に行った。
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「どうもお待遠様。
いついらしったんです?
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篤は本をふせて立ち上りながら丸い声で云った。
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「も一寸前なんです。
帰ろうかと思ったんですけどあの女《ひと》がもう直《すぐ》だって云ったんでこんな処に待ってたんです。
いそがしいんですか?
「ええ昨日《きのう》まではね。
でも今日はようござんすよ、
きまっ
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