1字下げ]
よっぽどの時間と根気がなけりゃあ。
[#ここで字下げ終わり]
千世子は叔母のひらったい顔と小っぽけな額を思い出した。
そしていかにも感謝の念にあふれた様な返事を書いて心の中に朗読しながら何とはなしの可笑しさに笑って居た。
葉書は、友達からカナリーが雛を育てたからあげようと云ってよこした。
育てるのは若しかすると楽しみかもしれないけれど、病気になった時やそのほかの面倒くさい事を考えるともらう気もしなかった。
千世子は床に入ってからも中々ねつかれなかった。
子供の時から幾人も変った友達の事を思い出したりして自分一人はなれたものの様にも思った。
自分一人多くの人の群からはなれたと云うのも必[#「必」に「(ママ)」の注記]して不愉快なはなれ方ではなかった。
小さい時分からあくせくして友達を求め様としなかった千世子は今もあんまり沢山な友達を持っては居なかった。
頭の友達、
形の友達、
千世子は友達を斯う二つに分けて居る。
頭の友達――それは千世子の満足するだけの人は今だに得られないものであった。
形の友達でもそうだ。
御親友、とかりにも名づくべきものは一
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