リシチ》があります」
だんだん自由に話せるようになり、ナースチャはいつか再びテーブルのそばまで戻って力づよく云った。
「ごらんなさい。アンナ・リヴォーヴナ、もし明日でも、いらなくなれば、あなたはわたしを出すことが出来ます。でも、わたしはどうしたらいいでしょう?――それはわたしの苦しみです。あなたの苦しみではない」
「……そりゃ本当だ。……でも、ナースチャ。お前、どのくらい沢山|組合《ソユーズ》に入ってる娘たちが失業で淫売婦になってアルバートをうろついているか知ってるかい」
ナースチャは知らなかった。アンナ・リヴォーヴナは、舌を鳴らした。
「ごらん!」
人さし指を立て、ナースチャの顔の前でふった。
「自分の胡瓜を売ろうとする人間は、それが苦いとは云わないものさ。第一、組合《ソユーズ》へ入ればお金とられるんだよ」
「それは知ってます」
「いくら払わなけりゃならないって云ったい」
「…………」
確かな歩合をナースチャは知らなかった。
アンナ・リヴォーヴナはしばらく頑固に黙っているナースチャの顔を見まもり、やがて捨てるように云った。
「わたしのことじゃないから、どうでもいいけれどね。
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