日暮しをみて、若い人々は、女の一生というものをどう思って眺めるだろう。長男の家族的な負担の重さは、長男という身分に生れあわせた青年達の自由さと身軽さと自分で選ぶ人生の道を奪う場合が多い。同じ男の子でも、次男、三男は長男の犠牲となる場合が多かった。戦争で長男が奪われた時などは、これまでどうせ、分家をするものだとか養子に出るものだとか、という風に扱われていた次男、三男が全く逆に、長男の義務と負担とを負わされることになる例も多い。結婚や恋愛の問題さえも、長男の場合と、次男、三男の場合とでは周囲からの圧迫が違って来る。村の生活では若い者と年輩の者との順位というものはきびしく、村民の寄合いの席順から発言の権利まで同等ではない。都会の工場労働者は、大人になった熟練工よりも、青年工を使った方が賃銀が安いということから、いつも青年労働者を多く使う。または女を使う。
 このあいだ政府はインフレの物価騰貴につれて最低賃銀の基底を公表した。若い人々はあれをみて何を感じたであろうか。男子三十歳から五十歳が最低四百五十円といわれている。では二十八歳の青年、二十五歳の者、二十二歳の者、その人々の労働の報酬はどうな
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