青年の生きる道
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凡《あら》ゆる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年五月〕
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 日本の人口は七千万といわれている。その中で青年はどれほどの数を占めているのであろうか。今日、日本に生きる私達は皆一かたならない困難を持っているし、一朝一夕に片づかない社会的課題を持っている。日本の民主化という窓は明日に向って明るく開かれているけれども、その国を横切りつつある私達の足もとには長い歴史が今日に齎している雑多な矛盾と障碍とがある。
 青年の生活を思う時、私達の心には一口には言い現わせないいとおしみと希望とがある。こうして日本の若い人々、明日の担い手である若い男女青年の生活を思いやっている時、私達は何か話の始まりにきっかけとなる、せめては一つの小説とか、一つの伝記とかを思い出したいと思う。ところが一寸その例が見当らない。日本の作品ばかりでなく、外国の文学を考えても、直ぐ日本の今日の青年の生活とぴったり心の合った話題を持つ作品が思い浮ばない。これはどういう理由であろうか。
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