勿論、私の文学についての知識が決して広くないということが第一の原因である。けれどももう一つ原因が感じられる。それは今日の日本の社会の事情と、今日までの数年間を日本の青年が経て来た経験とは、日本の歴史に未曾有の内容を持っていたばかりでなくて、それは世界の青年達の経験からも独特な性質を以って際立っているからではなかろうか。
 第二次世界大戦は地球を血みどろにした。そしてその結果、世界は自身の流血の上に立って、国際間の諸矛盾を解決するために戦争というものは再び繰返されるべきものでないということを学んだ。日本も同じ大きな道を辿って同じ結論に到達している訳ではあるが、然しこの過程には世界に類の無い日本の若者だけが負わされた犠牲があった。
 日本の民主化がポツダム宣言によって、政府に対して義務づけられたということは、とりも直さず、第二次世界大戦を契機として日本がどんなに封建的な暴力的な権力によって支配されて来ていたかということを語っている。
 世界が驚きの眼をみはって眺めたものの一つに特攻隊というものがある。特攻隊に参加した若い人々の精神の中には、その人々自身にとってそれぞれ真面目な、情熱を傾けた
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