具体的な現象ならびに、文学の一部におけるよくない傾向の発生について適切な注意をくばる実力をもっていたのなら、そもそも『星』のような場合は起らなかったかもしれない。党の文化問題として批判の発端がとりあげられたということで、他国の知識人の間には三十年来それが一つのマンネリズムになっているとおりソヴェト同盟における芸術の自由その他にたいする反撥が予想されるかもしれない。けれども、毛沢東が中国民衆の人間らしい生活の確立のために、あれほど懇切に、あれほど初歩の問題から文芸の課題について語っているとき、誰がそれにたいして反感を抱きえよう。とくに日本の読者のある種の人々は中共にたいして同情的であることも興味ふかい。ソヴェト同盟において、党は全社会生活にたいする指導の責任をもっているのだし、その上、ソヴェト同盟においては彼ら組織人そのものが、直接文学の読者の一部でもある。まず読者として批判の権利をもっている。この生きた関係は、現在の日本の社会感情や、前衛党とその外との知的関係のありかたのすこし前方に進出したものである。合法党として存在しはじめてわずか一年を経たばかりの日本の党が、よしんばまだ十分豊饒な
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