行為さるべきであろうという意味である。
問題はここまで来て、新しい障害に出会うと思う。何故ならば、上述のような希望と意志とで生きようとさえすれば直ちに、響きの物に応ずるように、愛すべくよろこぶべき対手が出現するかというに、遺憾ながらこれも決して、波荒き現実の中で指定席は持っていないからである。恋愛に於て、理想とする対手にめぐり合えない歎きは、謂わば人類が恋愛詩とともに今日に伝えている訴えである。或る意味では、さきに触れたような人間発展の明確、強烈な意欲として恋愛を自覚するほど、猶更周囲にふさわしい対手、質の均衡した生活感情の持ち主の乏しいことを痛感するかもしれないのである。では恋愛の低さに馴れ合ってしまったらどうであろうか。もし彼の意欲がまがいものでないならば、その事でわれと我身に告白せざるを得ない発展的意慾そのものの実行的な無力さや、抽象性に苦しまざるを得なかろう。
若い女性自身の生活が内外から呼びさましてゆく、人間的な生活への欲求というものが、問題に答える重要な因子としてここに立ち現れて来る。教育の外貌は益々庭訓風になっているが生活の現実が刺戟する発展への翹望が、若い女性の心に
前へ
次へ
全7ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング