成長意慾としての恋愛
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)駭《おどろ》き
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三八年十一月〕
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ある種の人々にとって、恋愛はそう大した人生の問題でなく感じられているかもしれない。あながち志壮なるが故にではなく、ごく古くからありふれた習俗の枠にはまった考えかたで、恋愛と青春の放埒と漠然混同し、その場その場で精神と肉体とを誘い込む様々の模造小路を彷徨しつつ、身を堅める時は結婚する時という風な生き方である。
そういう風の吹くままの流れかたを自身の生活として承認出来ない心持の多数の若い人々は、社会の現実について目がひらけて、自分の生きかたを問題にして来るに従って、その全体的な問題の最も有機的な部分として、恋愛のことも真面目に考察せざるを得なくなっていると思う。今日、大多数の若い人々が、男女にかかわらずそれぞれの恋愛について、私的なことであるが又公的なことでもあるとする一つの公開的態度をもって対する根本には、上述のように、恋愛の含む広い複雑な社会性の意識がいつとなく作用し
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