い女も今日では、あわれにもそれを近代性が彼女に与えた賢さであると勘ちがいしているのが少くない、これらの事情はもつれあって、全く旧来の家と家との縁組みの習俗へ若い世代を繋ぐかたわら、それは現代の経済内容を盛って金、地位などというものへ、多くの進歩の可能を埋没させてしまう結果となっているのである。
 このような現実は、結婚の質を低めているばかりでなく、当面には恋愛の質をも粗悪、粗忽にしていると思う。いつかわが手から落ちるだろうと思って摘む花を、誰が一々やかましく吟味して眺め、研究して掴むだろう。そういう、とことんのところで消極的なものが包蔵されている心理で、良い恋愛の対象にめぐり会えまいことは一応わかることだし、その程度の対象では生涯の伴侶として決定しかねるという因果関係が生じて来るのもわかる。
 真率な、健康な理性と情感とをもつ若い世代は、自身が歴史の火に負うている課題として、出来るだけ、恋愛と結婚とを一本の道の上に置くように行為すべきであると思う。ここで一本の道の上というのは、一から二への直接の移行という意味ではない。それぞれの人の人生に向う態度の発展を語る一貫性の一内容として自覚され
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