ある男性の手によってされている。けれども、女囚の生活、獄中生活が女性に及ぼす精神的の影響等は余り一般に知られていない。例えば免囚保護という言葉に、はっきり女性の免囚も含有す、という意識があるか。
従来、女と云えば誰人かの娘、妻、姉妹、という附属的地位にあった。女性が刑務所を出てからどうすると云う問題も、彼女等に帰るところ、かえってから養って貰うところがあったので表面に出なかったのだろう。「仮令どんなによくしても監獄はよくならない」――人間をよくする処にはならない、とクロポトキンが云った通りだとすると、ここで数年を暮した女性はどうなって世に送りかえされるのであろう。
男性の中には、自分の経験した獄中生活を記録した人が多くある。古から、古田氏まで沢山ある。種々なことをそれによって知るが、女性には尠い。私は寡聞にして殆ど女性の手になったものを知らない。一つには、女性の犯罪が原始的な故もある。獄中生活を記録し、批判するだけの教養があったら行わない犯罪が女囚には多い。それは頷ずけるが、教育あり、現代の社会に批判もある筈の人が、非常に不運な事情の廻り合わせで或る均衡を失い罪を犯し、獄中生活を経
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