アドが日本の会社でないように、チャスターは新潟からは産出しない。石油だけで部屋をあたためていようとすると一人で四罐のチャスターが入用だ。友達と私と、うちは二人で一つずつの部屋を持っている故、月に八罐のチャスターがいったとしたら、その始末は誰がしてくれるであろう。私共は、財布に合わせて大きすぎる独立心を持っているから、そのように石油はつかわない。炭で間に合わせるのだ。
 私の部屋は南向きだが、非常に寒い。椽がなく、障子一つで外気を防いでいるためだろう。日本の障子の風情を愛すのはピエル・ロティとヨネ・野口に止まらぬ。けれども寒いので私は風邪をひいた。一日、ホット・レモンを飲んで床についたが、無惨に高い天井を眺めているうちに思ったことがある。それは、雑誌のことで、雑誌も、正月の『婦人公論』についてである。
 初め、女流百人百題という題を見、ジャアナリズムを感じただけであった。順ぐり読むうちに、そうばかりも云えぬ気がして来た。兎に角ここには、これだけ現代女性の云うこと、思うこと、欲すること――あらゆる角度に於て内外の生活に連関した発露がある。筆者の態度が大体極めて粗笨であり、一時的であり、編輯
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