安定を可能とする方向として人民的な民主主義という、第二次大戦後の新しい歴史的環がつかまれるのである。
「真夏の夜の夢」は、まだきょうほどせっぱつまらなかった戦後の懐中に応じて、非常に好評であり、経済的にもあたったとされている。
土方与志氏が、東宝の大世帯の全体を活用しなければならない条件を考慮しながら観てたのしく、新鮮で変化にとみ、下劣でもないよろこびを、疲れた日本に与えようとした努力は十分につぐのわれた。「真夏の夜の夢」を劇として支えているのは、アテナの二組の若い恋人たちではなくて、插話的にあつかわれている職人衆の素人芝居の場面であることは面白い。あすこには、ほんとうに腹から笑う素朴なおかしさと、生地むいだしの人間らしさとがあってシェクスピアという戯曲家の着目と力量とが、全くひととおりのものでないことをうなずかせた。
この職人衆のリアリスティックな場面に対して、二組の恋人たちが、森の中で精霊たちのいたずらにあってうきめをみるおかしみが、巧みに配置されている。しかし、きょうのわたしたちは、「真夏の夜の夢」の変化の多様さ、飽きさせなさの間にやっぱりルネッサンス時代の人間精神の暗さと野
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