真夏の夜の夢
宮本百合子

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 ルネッサンスという時代が、人間理性の目ざめの時期でレオナルド・ダ・ヴィンチを産みながら一方では魔力が人間生活に直接関係するということをまだ信じていた野蛮な時代であったという事実を、はっきり会得しなければならないと思う。とくに、いまの日本では。――ケプラーの伝記、メレジェコフスキーの小説をみてもそのことはまざまざと描き出されている。
 最近の十数年間に、日本では二度、ルネッサンスにむすびつけて人間性の解放または人間とその文化の復興ということが云われた。はじめのときは一九三三年ごろ、プロレタリア文化運動が弾圧されつくして、日本の文化が歴史的な発展の道をふさがれたとき。その頃日本ロマン派と云われた一団の人々は、人間性の復興、文芸復興と叫んだが、その叫びは徒に空に消えて、それらの人々は林房雄を先頭として急速にファシズムにしたがえられて行ってしまった。日本ロマン派のルネッサンス論には、現実の社会生活の中で最も本質
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