、一方、色情狂めいた性的好奇心の横行とともに、今日の社会には到るところに叫ばれていると思うのである。
けれども、翻ってそれを聞きその影響を受けようとする大多数の男性女性は、事実に於て今日如何なる生活を営んでいるだろう。
未婚者のことは暫く置く。既に結婚した者の多数は、大抵の場合、今日、それ等の論議を高声ならしめた素因を、過去幾年かの昔に蒔いている。或る者は、奇怪な道徳感によって、家のために殆ど憎しみを感じる程の異性と配せられたものもあろう。
或る者は、打算的な賢明さから、人格を無視して所謂金持に運命を任せ、今、その暴虐と冷酷とに、あらゆる笑を失っている者もあるだろう。こんな意識は、また多くの男性にも勿論あるに違いない。自分の妻を嘗て便宜上貰ったと云う反省、従って真実な愛の有無を、自ら思わずにはいられない。ところでかくてこそ人類の正しく幸福な愛は成就される、かくてこそ真の結婚として祝されるべきものだという規範、理想が、まるで彼等の自ら持つ事実とは正反対の形態、内容をとって続々と現れて来る。
時代によらず、周囲によらず、彼等の愛によって結合した者でない者は、現在恐らく百人が百人、恋
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