深く静に各自の路を見出せ
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)取繞《とりま》く
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|集団《マッス》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)社会の知識[#「知識」に傍点]は、
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静に考えて見ると、我々人類の生活に於ては、既に両性の差別と、その間に性的交渉の存する限り、種々な結婚生活の破綻や恋愛の難問題が起って来るのは、已むを得ない事実ではあるまいかと思う。
然し、それ等の事実に対する当事者、周囲の心の態度は、或る時代、社会によっていろいろに異う。今日、我々はどう考えても、ヘレナ一人のために、二つの部族と神々まで加えた戦争を惹起するような空想は、たとい一種のロマンスとしても実感を以て描くことが出来ないだろう。恋愛のいきさつは、人類の祖先が原始的生活を営んでいた時代、直に一|集団《マッス》の本能を刺衝するものとなった。彼等は、自分等がそれによって相争うことの善悪も、必要・不必要も念頭にない一個の情意となってそのうちに没頭したのである。
けれども、人類の認識の範囲が
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