をたてて居る。
 ジジー! ベルがなる。
 私は玄関に飛び出す。
 見るとS子ばかりじゃあなく、T子もA子も来た。
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「さあ早く御上んなさい。
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と云うとT子が時間がおそいからと云って私と二言三言云ったなり一人で先へ帰って仕舞った。
 何だか馬鹿された様で止めもしなかった。
 S子は私がたのんどいたものをわざわざ持って来て呉れた。
 三十分ばかり話して、一寸私の書斎をのぞいて人に届けてもらいたいものをあずけると二人ともすぐ帰って仕舞った。
 段々せわしくなって来たんだから無理もないけれ共何てせいて帰った事だろうと、書斎にぽつんと座って飾った美くしい人形を見ながら思う。
 あれじゃあ、何のために此処を飾ったんだかわけがわからない。
 腹立たしい気持ちにもなるけれ共まあ一寸でも見せてやったからと思えば幾分か、あきらめもつく。
 彼の人達が来る前よりも私はくしゃくしゃして来た。
 飾ったものなんかさっさと仕舞い込んで仕舞う。
 気晴しにマンドリンを弾く。
 左の第二指に出来た水ぶくれが痛んで音を出し辛《にく》い。
 すぐやめて仕舞う。
 西洋葵《
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