せいようあおい》に水をやって、コスモスの咲き切ったのを少し切る。
花弁のかげに青虫《あおむし》がたかって居た。
気味が悪いから鶏に投げてやると黄いコーチンが一口でたべて仕舞う。
又する事がなくなると、気がイライラして来る。
隣りの子供が三人|大立廻《おおだちまわ》りをして声をそろえて泣き出す。
私も一緒《いっしょ》にああやって泣きたい。
声を出そうかと思って口をあく、――あきは開いても、
何ぼ何でも、
と思うと出かけた声も喉深《のどふか》くひっ込《こ》んで仕舞う。
風がサアーッと吹くとブルブルッと身ぶるいの出るほど寒い。熱が出ると悪いと思って家へ入る。
それでもまだ寒い。
かんしゃくが起る。
秋風が身にしみる。「ああああ夜になるのかなあ」と思うと急にあたりに気を配る――午後六時。
底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
1986(昭和61)年3月20日第5刷
初出:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2009年1
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