に、ふくぶくな姿を見せている。或る日、何心ない遊戯心から、それを彼等の籠の中に入れて見た。同じ仲間の剥製を、何と思って見るだろう、それが知りたかったのである。
畳の上に手をついて見ていると、なかなか気が附かない。止り木の上に並び、暖い日を浴びている彼等は、飛びもさわぎもせずに、微かに嘴などを動かしている。
やがて、雌のじゅうしまつが、ふいと群から離れた。ひょい、ひょいと、下の枝に来る。餌を拾おうというのであろう。うす黄色い鶏の雛子は、入口の直ぐ前、餌から一尺も此方に立たされているのである。
何心なく下りて来た彼女は、一寸の所で、雛に心付いたらしい。そこに止り、しきりに頭を動かし、右、左に移って覗いている。――腰をおろし、さて、思い切って飛ぼうという姿をするが、また不安心で、頭を動かして下を見る。(小鳥は、物を見ようとすると、眼玉を動かさず、頭部全体を傾け、うつむけて物に向く。)頻りにそうやっているうちに、どうも敢て近づく気がしないのだろう、ちょん、ちょんと、また元の枝まで戻ってしまった。それでも気になるらしく、低い声で、喉を鳴らしているのである。
今度は、同じ鳥の雄が来た。やは
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