「もしもし貴方はだれですか、
百姓ですか、
オヤオヤ口がありませんね、どこがそうなんです。
ヤ貴方の口は竹で出来てるんですね。
そうですか誰ですって水道ですって?
姉ちゃん威張ってね、
『俺は水道だぞ、』
って云った。
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と云って来ます。
二人はもうすっかり気が合って仕舞って其那事を話しながら私の大好きな両側に低いつつじの列に生えて居る間を行ったり来たりしました。
あれだけの広さを自分達丈で占領してまるで違った世界に旅行して居るのですもの、つまらなかろう筈が有りません。
園丁が来て花にやるために水を温室に汲み込むのを見ては、
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「あんなに太った百姓が大よだれをたらして居る。
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と笑いこけます。
グーズベリーの様な小さくテロテロと赤い実を見つけ出して、
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「お姫様御機嫌よう。
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とお愛素を云います。
私は一瞬時もじいっとして居ない子供の心を非常に珍らしがって見て居ました。
いつもはこんなに絶え間なくお伽の中に入った事を云って居る事は無いのですから、
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