この周囲の様子が余程力添えをして居るものと見えます。
先にいつだったか私と一緒に来た時もそうでしたが、多勢人が居て、ガヤガヤして居る時には只はしゃぎ廻って、私が止めるのをわざと写生をして居る人の顔をのぞきに行ったり、息を切らして下らない、
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「お馬鹿三太郎
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だの何だのと云っては兄達をおっかけて運動は充分つきますけれ共、草が奇麗だと大して思うでもなくワアワアと帰る頃にはヘトヘトになって、不機嫌で仕舞うのがおきまりです。
決して今日の様に枯れ枝を、
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「可哀そうにお爺さんの木や。
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などと云ったり草の芽生えを気づいて立派に生えてる等とは云った事がないのです。
そんな風で帰るまで凡そ二時間もの間、育ちかけの芽生えのお話やら空を飛んで行く鳥のお話やら、非常に子供らしいそれで居てなかなか利口な話をしつづけて居ました。
私共には只安らけさと歓び位ほか与えなかった彼の景色もまだ満八つにもならない驚き易い子供の頭にはどれ程の感激を与えたのか知れません。
私は私が数え年で七つの年、今は居ませんけれ共叔
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