小さい子供
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)喫驚《びっくり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
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小寒に入った等とは到底思われない程穏かな好い日なので珍らしく一番小さい弟を連れて植物園へ行って見ました。
風が大嫌いで、どんな土砂降りでもまだ雨の方が好いと云って居る程の私なので今日の鎮まった柔かな日差しがそよりともしずに流れて居るのがどの位嬉しいか知れなかったのです。
植物園とさえ云えばいつも思い出す多勢の画板を持った人達とそこいら中にだらしなく紙だの果物の皮等を取り乱して食べては騒ぎ、騒いではつめ込んで居る子供と、彼等と同じ様な大人は、冬枯れて見る花もない今日等はちっとも来て居ないので、彼の広い内が何処にも人影の見えない程に静かでした。
広い緩い勾配の坂を上りながら小さい弟は不思議な顔をしながら、
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「今日は何故此那に人が居ないの。
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と云います。
後にも先にもたった二人自分達丈が歩いて居る事が頼り無い様に思われたのでしょう。
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