ン振り動かして跳ね廻る程面白がり始めました。
遠くの方をながめながら、
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「彼方の方を真赤な真赤な袴をはいて青い着物を着た人が二人行けば好いなあ。
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とか、いきなり乾いた草の根元をのぞきながら、
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「や、彼那小人が居らあ。
皆鈴を下げて黄色の着物を着て居る。
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と云ったりします。
あたりに見る人はないのですし私だって幾らか気が軽くなって居るので、黒土の現れた所へ来ると、わざわざ腰をまげて手で目鏡を作りながら、
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「あら御覧なさい、
ここは真くらですよ。
まあ彼那お爺さんが提灯を持って行きますよ。
いつんなったら明るく成るんでしょうねえ。
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と云ったり、水道が藁の着物を着て立って居るのに、
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「あら彼那人が立って居ますね、
誰でしょう聞いて御覧なさい。
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と云ったりすると、その言葉を待って居た様に走って行って、大変丁寧なお辞儀をしながら半ば怖れる様な滑稽な形恰をして、
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